「Sweet Lovesongs on LIPSTICK」  〜 Chapter1 真白編 〜

   11 朝からカキフライ!(3)

「というのわけで、これがベッド2台の真相だ。マシロさん、おわかりいただけました?」
「うん・・・」
「おお、わかってくれたよ」
「わかった・・・、わかったんだけど・・・」
「だけど?」
何でベッドが2台あるのか、それはわかった。
いかに気持ちいいか、実際寝てみたわけだから、それもわかっている。
リカとトモの仲のよさも、夫婦漫才の将来性もすごくわかった、でも、私がわからないのは、そこじゃなくて。
「でも何で?何でトモがそんなもの買えるの?ねえ、お金はどうしたの?」
「ああ、うん、やっぱそこだよな」リカもうなずいている。
「だってまだ14才でしょ?中学生でしょ?働いてないんでしょ?」
「・・・実は俺さ、すっごい金持ちなんだよね」
「だからなんで!」
「何でって言われても・・・」
「マシロ、もうよせって・・・」
「あっ」リカにたしなめられて、初めて気がついた。トモの少し怯えたような表情、私、いつのまにか、トモを追い詰めてた。
「トモごめん!ちょっと、うん、あれ? なに私、興奮してんだろ、ホントゴメン・・・」
「大丈夫!俺なら平気だよ!」うなだれる私の肩を、トモがポンポンと叩き、リカがまねして、私の頭をポンポンと叩いた。顔を上げると、トモはさっきまでの、ふんわりとした笑い顔に戻っていた。
「トモが言うにはさ、宝くじが当たったんだって」「へ?!」
「アッハハ、当たっちゃったんだよね、1億円」
「そんな・・・」
「親に頼まれてさ、よく当たるって評判の売り場まで買いに行ったんだよね。で、お駄賃に10枚もらったら、それが大ヒット!」
「な、信じられないだろ? あたしだって信じられないよ」
「信じなくってもいいよ、とにかく、俺はそれで金持ちなの!」
「トモに訊いても、とにかく当たったの一点張りでさ、ちっともラチが空かないんだよ。で、仕方がないから、あたしはそれを信じることにしたんだ」
「うむ、信じるものには、ベッドを買ってあげるぞ」
「なんかこれ、信じた方が面白そうだしな」「そうそう」
もしかして、この人たちはグルになって、私をからかってるだけなんじゃないだろうか。
「まあ、この辺はあまり、突っ込まないほうがいい。とにかく、トモは金持ちだって、それだけは事実なんだし、あたしもそれ以上のことはよく知らない。外にバイクあったろ、あれだって、トモに買ってもらったんだぞ」
「ホントに?!」「まだあげてないってば」
「来月、あたしの誕生日があるんだけどさ、その時にキーを貰う事になってる。さすがにあたしも、理由もないのに、あんなものもらうのは気が引けてさあ、それでじゃあ、誕生日まで待とうって、2人で決めたんだ」
「誕生日になったら、一番に乗せてもらうって約束だからね」「ああ、もちろん」
「今になっては、後悔してるよ。すぐもらっておけばよかったんだよな、なんかおあずけくらった犬みたいだよ」
「あと1ヶ月、がまんがまん!」
楽しげに笑う2人、でも私は、少し寂しかった。何か隠し事をされているようで、2人と私の間に、とどかない距離のようなものを感じた。この2人はデキている。変な意味じゃなくて、ホントにデキている。昨日今日混ざった新参者が何を言うかと思われても、それでもその距離が、私には寂しかった。
「じゃあ、私、帰るね」そして突然、ウチに帰りたくなった。きっと嫉妬とか、そういうのじゃなくて、単純にお邪魔かなって、ただそれだけなんだけど。
「ん、そっか、じゃあ、また明日な」「うん」「ばいば〜い」
「あ、そうだマシロ」「何?」
「今言った誕生日、4月11日なんだけどさ、パーティーやるから、空けといてくれないかな。夜通しやるから、できれば、友達のうちに泊まるってことで」
「うん・・・お母さんが、許してくれたらね」
「ああ、ぜひ頼むよ。マシロが来てくれると楽しいよな」「うん!」
「ケーキ買って」「ごちそう並べて」「音楽かけて」「ビールは飲み放題!」「特別だぞ」「やった!」
「というわけで、ぜひ来てくれ」「来てくれ」
「うん、じゃあ、頼んでみるね。そしたら、あたしも何か作ってあげるから」
「ホントか?!」「うん、まかしといてよ、料理は得意なんだから!」
「よし、じゃあ約束!」「・・・ゴメン、まだ約束はできないけど・・・でも、必ず!」
「ああ、待ってるからな」「からな!」「うん」
私は玄関から並んで顔を出す2人に大きく手を振って、それから軽やかに階段を降りていった。
その下に、リカの、まだトモの、バイクが休んでいた。1ヶ月待っててね、私はシートをラケットでポンポンと叩いて、斜めに公園を横切って家に向かった。
辺りはすっかり暗くなっていて、手帳に印を付けたのは、私が部屋に戻ってからだった。

   つづく
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