第1話・静と動 (7月9日 ネタバレBBS)

いよいよスタートしたSUMMER SNOW。
第1話の感想は、一言でいうなら、コントラストの強さ、ということでしょうか。

篠田家をのぞいてみましょう。
夏生は動、知佳も動で、純が静、ちなみに、弘人も動。
信用金庫をのぞいてみましょう。
ユキが静で、美沙が動、ユキの仕事が動で、ユキの家庭は静。
海は静、自転車は動。
ダイバーは動で、海の中は、限りなく静。

オープニングが静で、エンディングが動。

そして、それら全てを包み込むように、静の音楽。
千住明+御園雅也、この組み合わせは、職人芸です、ちょっと卑怯かも^^

さて、第2話の展開は、動とくるか、静とくるか。
第1話は、間違いなく、静、でしたね。

細かいことを言えば、純がデートで外出している時、
夏生と知佳が2人で食卓に並ぶシーンがありましたね。
2人なんだから、なにも横に並ぶ必要もなく、向かい合えばいいのですが、
でも、そういえば、食卓のホームポジションって、誰もが決まっていないですか?
あのシーンに、僕はちょっと違和感を覚えて、それからすぐに思い直して、感心して。
そういった細かいリアリティが、きっとドラマに説得力を生むのでしょう。
良いシーンだったと思います。


第2話 神様なんていない (7月21日 ネタバレBBS)

「神様なんていない」
よかった、僕はそれを聞いて安心したよ。

僕は、神様から生まれたんじゃない。
僕は、人間から生まれたんだ。

君は耳がよく聞こえない。
でも、それは、神様のせいじゃない。
だから、安心していいよ。
それは、誰のせいでもないんだ。

人は、人から生まれ、人を残して死んでいく。
子孫繁栄、でも、ただ、それだけじゃないよ。

働く父親、その背中を見ながら育った少女、
いつしか彼女は、自分も働きたいと願うだろう。
親切な自転車屋、自転車を与えられた少年、
いつしか彼は、自転車屋になりたいと願うかもしれない。
そして、みんな繋がっているんだ。
神様なんていない、ただの生命同士、固い絆でね。

ありがとう。

君が先生を目指してくれること、
僕は先生として、とても嬉しく思うよ。
苦労はすると思うけど、でも、心配はいらない。
それは誰のせいでもない、
それはただ、君の生命のせいなんだから。

ありがとう。

いつか先生になった君に、
今日の君のような生徒が現れたら、
きっと、この気持ち、わかってくれるよね。


第3話 今井@101% (7月23日 ネタバレBBS)
今回は、弘人こと、今井翼のお話。

今井翼、すごくおもしろい役者だと思う。
うまくできている時と、そうでない時の差があまりにも激しい、
それは人によって、いい方に作用する場合と、悪い方に作用する場合があるのだが、
彼の場合は、間違いなく前者だろう。

彼の演技力について、かなり厳しい意見があることは知っていた。
実際僕にも、ちょっと疑問符をつけたくなるシーンがいくつかあった。
何かまだ、役者として入り込めない部分があるというのか、
随所に悪い意味で、「演技」が残ってしまっているような、そんな感じがした。

彼の役者としての本当の力、第3話で、その片鱗を垣間見たような気がする。
それを引き出したのは、彼自身の意思ではなく、また、演出家の指導でもなく、
ただ、その場の空気、それだけだったのではないだろうか。

堂本剛、池脇千鶴、彼を囲む一流の役者たち、彼らが100%のパワーでぶつかってくる、
そのとてつもないエネルギーが、視聴者に届くより早く、まず目の前の翼を揺るがす。
そして、それに導かれるように、彼の中の弘人が、初めて100%に到達する。
演技力の乏しさ、それを一番感じていたのは、翼本人ではなかっただろうか。
初めて味わう、100%の快感、全身がそれに沸き立つ。そうなると、何が起こるのか。
信じられないことに、既に100%の弘人に、さらに翼がエネルギーを与える。
今度驚くのは、共演者の方だった。100%で叩いたら、101%で返ってきた。
そして彼らもまた、それを喜ぶかのように、ゆっくりと100%を超える。
そしてついに、そのシーン自体が、100%を超えた。
その常識外の快感を、制作者と視聴者が共有する。
それは、なんて幸福なことだろうか。
これがドラマだ、ざまあみろ!

100%のドラマなんて、見たくない。
普段は90%でもいいから、どこかで絶対、101%が見たい。

今井翼、もうミスキャストだなんて言わせない。
若いドラマ、でも、それに反して、どこか経験豊富な出演陣。
そんな今、SUMMER SNOWに本当に必要なのは、誰よりも彼なのだから。

第4話 100万回生きたねこ (8月4日 ネタバレBBS)
おーい、どこを見ているの?
もう、ここだよ!ここ!
まあ、聞こえてないなら、それでいいけどね。
どうせ、ひとりごとだから。

ねえ、お母さんは、ぼくがいると、大変だよね。
ねえ、お父さんは、ぼくがいると、大変だよね。
だったらぼくは、うまれなくても、いいよ。
どうせぼくは、いつも旅の途中なんだから。
ぼくは、また、長い長い、旅に出るよ。
そして、その旅先で、今度こそ、誰かにうんでもらうんだ。

いやにあっさりしてるって?
いやあ、うまれる前の子供なんて、こんなものだよ。
うまれちゃうと、忘れちゃうものらしいけどね。

ねえ、僕がうまれないと、お母さんは、悲しいよね。
ねえ、僕がうまれないと、お父さんは、淋しいよね。
ごめんね、そんな思い、させちゃって。
でも、ちょっとだけ、うらやましいな。
だってぼくはまだ、悲しくも、淋しくもないんだから。

うまれなければ、しぬことだってないよ。
だから、僕は大丈夫。
もう、心配かけたりしないから。

じゃあ、僕は行くよ。
またどこかで、会えるかもしれない。
でもたぶん、お互い、気付かないだろうけどね。
やだなあ、そんな悲しそうな顔しないでよ。
こっちまで、悲しくなるじゃない。

「!」

あれ?! 僕は今、悲しいの?
なんで? だって、僕はまだ・・・

「だってこのお腹の中にいるのは、
 大好きな弘人と私のこどもだもん。
 いまだって、ちゃんと生きてる」

驚いたなあ。
なんか僕、うまれちゃったみたいだ・・・
じゃあ、こうなったら、ちゃんと責任とってもらうからね。
迷惑かけるよ、覚悟しておいてね。

ねえ、今のこの気持ちは、なんだろう。
悲しいでも、淋しいでもない。
あれ、今度はどうしたの?
お母さん、すごく嬉しそうだよ。

そっか、これが嬉しいっていうのか。
うん、なんか、すごくいい感じだよ。
お母さん、ありがとう。
お父さん、ありがとう。
二人が嬉しいと、僕も、すごく、嬉しいんだ。


第5話 しあわせって、なんだっけ。 (8月11日 ネタバレBBS)
鍋はいいですね。
弘人くんも、すっかり篠田家の一員って感じです。

人間は、火を味方にできた、最初の生き物です。
恐怖であり、破壊、消滅の象徴でもある、その炎、
人は、それを熾し、それを囲むことを覚えました。
囲炉裏でも、キャンプファイヤーでも、もちろん鍋でも、
火を囲む人々に、笑いが絶えることはありません。

なぜ、火なのでしょう。
それはきっと、火は、小さな太陽だからです。

万物の源であり、全ての生物の、生きる糧でもある、太陽。
人間はその神々しい輝きの一部を手に入れ、それをコントロールすることを覚えました。
そしてそのちいさな炎の中に、僕らは、太陽を見るのです。

人間はまた、死後、その肉体を火に委ねることを覚えた、最初の生き物でもあります。
もちろんそれは、衛生の問題であったり、宗教上の理由であるかもしれません。
ですが、その本当の理由は、もっと根幹的な部分にあるのかもしれません。
潜在的に、僕らは望んでいるのでしょうか。
太陽に抱かれ、僕らの肉体は、幸福のうちに旅立っていきます。

この日、篠田家に、1つの太陽が灯りました。
それはとても小さいですが、6人の子供たちを照らすには、充分過ぎるほどです。
1つの太陽、1つの鍋、そしてそのエネルギーを、体の中に取り込みます。
やがて、6人の体に、同じ太陽が灯ります。
同じ神様に見守られた、6人の天使の誕生です。

しあわせって、なんだっけ。
そんなことを考えていたら、明石家さんまさんの歌が思い出されました。
そうでした、しあわせって「ポン酢しょうゆのある家」でしたね。


第6話 約束する力 (8月18日 ネタバレBBS)
ある日、男は約束した。
「こんなキレイな海、絶対いっしょに、見に行こう!」
そして、女はうなずいた。

   「君を絶対に幸せにする」
   そんなことを言う男は信用できない。
   そう言った人がいる。
   人はなぜ、約束をするのだろう。
   明日は、何が起こるかわからないというのに。
   突然にも、人は死んでしまうかもしれないのに。

ある日、男は約束した。
「お兄ちゃん、パパに会わせてあげるよ」
そして、少女はうなずいた。

   守れない約束は、あって当然だ。
   だって、明日は、何が起こるかわからないんだから。
   でも、だからこそ、僕は君に約束するんだ。

ある日、女は約束した。
「絶対、また会おうね」
そして、少女はうなずいた。

   約束からはじめよう。
   人はきっと弱いから、そうしないと動き出せないんだ。
   そして、約束は、必ず守ろう。
   だって僕らは、ウソをつく人が大嫌いだから。

ある日、ある人は約束した。
「僕は絶対、約束を守るよ」
そして、その人はうなずいた。


第7話 若さでいこう! (8月25日 ネタバレBBS)
SSは、とても若いドラマという印象ですね。
それは多分、出演者が若いってこともあるんでしょうけど、
もっと根本的な問題として、
ああ、なんだ、脚本自体が、すごく若いんだ、ということ、
第7話を見ていて、そんなことを感じました。

普通、ドラマの企画を立てるのは、プロデューサーの仕事です。
そしてその企画を、脚本家に伝えます。
脚本家は、その企画を作品に書き上げ、それを演出家に渡します。
演出家は、その脚本を、出演者やスタッフに伝え、作品を形にします。
そして、最終的に僕らの目に届くのは、出演者の姿ということになります。

脚本家は、いわばPとDの板ばさみの状態にあります。
それはとても窮屈で、ですがまた、とてもやりがいのある仕事です。
Pからは、作品の内容を指定され、
Dには、制作の段階で、自分の作品を、いくらでも加工されてしまう、
そんな中にあって、どれだけ作品に自分の個性を主張していけるのか、
ただ惰性で書いていては、あっという間に、自分が消えてしまうのです。

僕は、小松江里子の個性が、若さにあると思うのです。
作品自体は、非常に荒削りで、多少強引に展開していきます。
ですがその中でも、しっかりと芯が1本通っているので、
話の本筋は、決してぶれることがありません。
まるで、ゴールだけが見えていて、そこに向かって最短距離で突き進むような、
そんな若さを感じるのです。

そうです、SSは若さでいきましょう。
細かい演出は、すべてベテラン揃いの演出家にまかせて、
ただゴールに向けて、みんなで思いきり突き進みましょう。

さあ、残り4話、準備はいいかな?

<おまけ>
第7話、演出補の名前が変わりました。
うん、ということは、準備完了ですかね。
間もなく、もう一つの「若さ」が立ち上がります。

<おまけ2>
第7話、ユキの家に来た夏生が帰ったあと、
ユキは夏生に電話をかけます。
テーブルの上には、夏生の持ってきた「イセヤの最中」が。
でもなぜか、少し減ってます^^;
その理由は、ユキに訊いてみましょうかね。
いいなあ、こういう演出。


第8話 モテモテ、ユキちゃん。 (9月1日 ネタバレBBS)
それにしても、ユキって案外もてるわよね。
まあ、ちょっとかわいいし、いかにも、おしとやかって感じで。
男ってみんな、ああいうタイプに弱いのよねえ。

片瀬さん、外線!

ほら、また男からだ。
これは・・・いつもの自転車屋のお兄ちゃんとは違う人よね。
いつもいつも仕事中にかけてきちゃってさ。
すこしはこっちの都合も考えろってのよね。

ねえちょっと鈴木さん、伝票まだなの?!
はーい、今やってますっ!

その点、あのお兄ちゃんは偉いわ。
ちゃんとお昼休みに、それも携帯にかけてくるんだから。
ユキも安心して話せるみたいだし、やっぱり男は、気配りが大事よね。
でも自転車屋かあ、いまいちパッとしないなあ。
営業中に乗り込んできてカウンターで説教始めるあたり、
なんか気難しそうだし、私ならパスね。
もっと将来有望な男をつかまえなくちゃ。

ユキちゃん、わかる? 今の時代はメールなわけよ。
ほら、これなら仕事中でも受けられるでしょ。
端末も小さいから、机の下でちょっとメールチェックなんてことも・・・
「メールを1件受信しました」
おっと、来てる来てる、なんだって?
合コン・・・広告代理店?! こういうのがあてにならないのよね。
ま、いちお、行ってみっかな。
もしかしたら、ってこともあるしね。

鈴木さん、伝票!
はあいっ!

まあったく、うるさいんだから・・・


第9話 戦う大道具さんパワー (9月8日 ネタバレBBS)
ドラマも佳境に入ってきてしまうと、まともな感想が書けなくなってしまうんです。
何か、何を書いても安っぽく見えてきてしまって、
先週あたりから、そういえば、そんな兆候が見えていましたね。反省。

というわけで、今週はドラマの本編からちょっと外れて、
その他に気付いたことを書かせていただきます。

第9話、青児は夏生を、いつもの、怪しいマスター(笑)のいる喫茶店に誘います。
ところがこの喫茶店、よーく見てみると、
6話か7話あたりでユキと夏生が行った焼肉屋と同じセットなんです。(たぶん)
(ちなみに焼肉屋の外観部分はロケです)
いや、もちろん、全く違って見えるように作り変えられてはいるのですが、
基本的な柱の配置や、それから、中庭への出口のところにある格子状のガラス戸、
この辺、同じなのが、辛うじて見てとれます。
(左・喫茶店 / 右・焼肉屋)



大道具さんは、わざわざ1シーンのために、これだけの大改造をこなすわけです。
だったら、ロケで済ませてしまうほうが簡単なんでしょうけれど、
撮影時間、機材、照明、電源等、様々な条件を考慮すれば、
撮影の自由度は、スタジオセットに勝るものはありません。
いやいや、大変なマジックです。おそれいりました。

このセット、TBSのスタジオに常設されているんでしょうか。
ハッと気付いて、ビデオで確認してみたのですが、伊藤一尋Pの前作「美しい人」
(99年10月〜12月放送・ちいちゃん出演で、当サイトに特設ページ有)
京介先生が行きつけていた喫茶店も、たぶん、このセットだと思います。

多くの「いい仕事」に支えられて、SSもいよいよ、残り2話です。
僕らに課せられた仕事は、絶対に見逃さないこと、ですね。


第10話 水平線の彼方へ (9月15日 ネタバレBBS)
「ユキちゃん、走っちゃダメだ!」
あの時、僕は、そう叫んだね。
君は今まで、一度だって、走ったことがなかったから、
僕は知らなかったんだ、君の、そのスピードを。

走り出した君が、全てを置き去りにして、どんどん、小さくなっていく。
知佳が、弘人が、純が、みんな、心配しているよ。
美沙が、先輩が、上司が、食堂のおばちゃんが、みんな、君の帰りを待っているよ。
静児が、院長が、美也子が、君のために、一生懸命頑張っているよ。
そして誰より、お父さんが、君の幸せを願っているよ。

なのにどうして、君はますます、小さくなっていく。
君の足音も、息遣いも、もう、聞こえないくらい遠くだ。
なのにどうして、君の鼓動だけが、どんどん大きく聞こえてくる。
もう君に、追いつくことはできないのかな。

無力な僕の足は、悪夢のように空回る。
ねえ、僕にはもう、君に託すことしか出来ないよ。
変だよね、見ず知らずの人に、こんなこと頼まれるなんて。
でも僕だって3ヶ月、ずっと、君と彼女のことを見続けてきたんだ。
無力なただの傍観者にしか、なれなかったけどね。

君なら、出来るよ。
いや、君にしか、出来ないんだ。
彼女がどこに向かっているか、それはわかるよね。
彼女に追いつき、そして落ち着いたら、また、ゆっくり、走り出そう。
今度は彼女を、自転車の荷台に乗せてね。
This way stretches as far as the Horizon.
So you are running toward there slowly and eternity.
言われなくても、わかってると思うけど、
でもやっぱり、言わずにはいられないんだ。


最終話 One year after 〜ハッピーエンドは自分で作ろう!〜 (9月21日 書き下ろし)
以下、 夏生→「夏」 純→「純」 弘人→「弘」 ユキ→「ユ」 知佳→「知」

夏: 篠田家恒例! 納涼・カラオケ大会〜!
一同: イエ〜イ!
純: いつから恒例になったんだろ・・・
夏: は〜い、純くん、うるさいよ〜
ユ: (笑)
夏: さて、本日はようこそお集まりいただきました!
弘: ようこそって、別になあ、
知: うん、いつもの茶の間・・・
夏: さて、夏もいよいよ本番だという今日この頃、皆様におかれましては、さぞ、日々の疲れ、ストレスなどがたまっていらっしゃることでしょう。しかし!それをそのままにしておくのは、非常に!体によくありません!
弘: 前置きはいいから早く歌わせろってんだよ・・・
夏: 弘人、何か言ったか?
弘: いえ、別に・・・
夏: いいですか? カラオケというのはですね、一人前の大人として、当然たしなむべき社会の常識なんですよ。死んだオヤジも言ってました。「日本人は、カラオケが歌えてこそ、はじめて社会人として一人前であり・・・」
知: そんなこと言ってた?
純: さあ・・・
夏: さて、カラオケにおいて一番大事なのは、その歌う順番。いくら無礼講とはいえ、目上の人を差し置いてマイクを奪うようなことは・・・

「向日葵ガ咲ク時」 ゆず/2000

ユ: あれ? もう曲入ってるよ
夏: おい、この曲、誰入れた?
弘: はい!俺オレ!
知: イエ〜イ!
夏: 弘人、お前なぁ
知: いいの! お兄ちゃん説明長すぎ! せっかくユキさんだって来てくれてるんだから、どんどん行かなきゃ、ねえ
ユ: そうそう(笑)
知: よし、弘人行け!
弘: ハイ! 一番、弘人歌います!
夏: いや、ですからね、カラオケにおいて一番大事なのは・・・
ユ: ハイハイ(笑)

南風が君の髪なびかせて 緩やかに夏が歩んでくる
慌しい毎日を忘れてしまいそうな 時間に身をまかせ目を閉じた
ガラスみたいな君の心を 臆病な僕の性格を
分かちあいながら歩んできたね 締め付けられそうな悲しみも乗り越えて

星のない夜の空に鮮やかな向日葵が咲いたよ
照らされた君の横顔見とれてたら胸がきしむんだ
乾いた泪の頬にそっと口づけをしたのなら
消えかかる花火にうつる君が 無邪気に微笑んでいたよ


ユ: ねえねえ
夏: ん?
ユ: 夏生から見て、弘人くんってどうなの? 自転車屋として
知: 弘人ももう、一通りのことはできるよね
夏: 40点・・・
弘: 夏生さん、そりゃないっすよ・・・
夏: うるさいよ、お前は黙って歌ってろ
弘: そんな無茶な・・・

突然降りだした夕立ちみたいに むき出しの互いの気持ちでさえも
優しさの傘を心にさして もうすぐ雨は通りすぎるから

当り前の事なんて本当は何も無いんだよ
ふざけあったり喧嘩したりこうしてここに居る事だって
ありふれた時間の中でもロマンチックを探しているから
君を抱きしめてもいいかい


夏: まあ、技術的にはな、ずいぶん出来てきたと思うんだよ、あとは・・・
知: あとは・・・?
夏: まあ、いろいろあるけど、まず経営者として、致命的に計算力がない
純: うん、それは言える
知: うんうん(笑)
ユ: (笑)
弘: だから、その部分は知佳と純に任せてあるって・・・
夏: お前なぁ、そんなことじゃ、いつまでたっても
知: 大丈夫だよ、そのくらい。お兄ちゃんだって出来てなかったし(笑)
純: そうそう、変わんない変わんない(笑)
ユ: それって、篠田サイクルの伝統?(笑)
知: そうだ! そういえば、お父さんも計算ダメだった!
夏: なんだそうかぁ(笑)
一同: ワハハ!
夏: って、笑い事じゃねえよ!

あの日見つけた名も無い花を大切に育ててきたね
信じる恐さを一つ知るたび君を愛しく思っていくよ


夏: 弘人、けっこう歌上手いな
弘: そっすか?(喜)
夏: なあ?
ユ: うん、すごい、聞いてて気持ちいい・・・
純: 上手くもなるよね。弘人、毎日春ちゃん相手に歌ってるから
知: でも春ちゃん、弘人の歌じゃ寝ないんだよね(笑)
純: そうそう、なんか喜んじゃって(笑)
知: で、そうすると、今度は弘人が喜んじゃって(笑)
純: 結局、ずっと歌ってる(笑)
ユ: そうなんだ(笑)

星のない夜の空に鮮やかな向日葵が咲いたよ
照らされた君の横顔見とれてたら胸がきしむんだ
乾いた泪の頬にそっと口づけをしたのなら
消えかかる花火にうつる君が 無邪気に微笑んでいたよ
心の奥に鮮やかな 向日葵が咲いたよ・・・


弘: おそまつさまでした
一同: イエーイ!
夏: うん、まあ、なかなかだったよ
弘: 夏生さんにそういってもらえると・・・
夏: さて、それじゃあ、そろそろ主役の・・・
弘: 純、何か歌うか?
夏: そうそう、そろそろ純くん・・・って、ええっ?!
純: 俺、歌はダメだって
弘: 何言ってんだよ、大学生にもなってさ、歌の一つも歌えなきゃモテないよ
知: あたしも純兄ちゃんの歌聞きたい!
ユ: うん、聞きたい聞きたい! ね、夏生?
夏: 純くんの歌かぁ、うん、それもいいんじゃないかな
純: 参ったなぁ・・・
弘: あ、じゃあさ、俺も一緒に歌ってやるから
純: ホント?
弘: ああ、で、曲は? どうする?
純: 弘人に任せるよ
弘: OK! じゃあ・・・

「境界線」 ゆず/1998

知: あれ? また「ゆず」?
弘: ああ、純の知ってる曲がいいかなって思って
知: 純兄ちゃん、「ゆず」聴くんだ
純: うん、弘人に教えてもらってね
弘: よし! じゃあいくぞ!

海が見えます ここから綺麗な海が見えます
昨日の揉め事いつかのいざこざの遠眼鏡で

ずっと沖の貨物船まで 向こうの工場の煙まで
全てを霞ませて 全てを見透かして
僕のため息は大きな雲になった

境界線を超える時僕は鳥にでもなるんだろう
そこは誰にも邪魔されない『自由』と『優しさ』の世界
境界線を追い越す時それは多分きっと 新しい朝の訪れ


夏: 何だぁ、純くん歌えるじゃない
ユ: ねえ、すっごいキレイな声・・・
弘: 聞いたぁ? 純のやつさあ、大学で、相当モテてるらしいよ
知: ホントぉ?(喜)
弘: ほら、ここんとこ、日曜日は毎週出かけるだろ
知: うん
弘: でもさあ、ダイビングセットは置きっ放しなんだよね
知: そういえば!
ユ: それはアヤシイねえ(笑)
夏: 純くん、隠し事はよくないなあ
弘: おら、純、白状しろよ、彼女できたんだろ!
純: まだそんなんじゃないって・・・(!)
一同: !
知: 聞いた?
ユ: 聞いた
弘: 聞きました
夏: なんだあ、純くんそういう人がいるんじゃない〜
知: ね、ね、どんな人?
夏: 今度連れてこいよ、歓迎するからさ
弘: ということは、また鍋っすか?
夏: 当然!
知: よし、まかせといて
純: だから連れてきたくないんだよな・・・(笑)
ユ: あ、それちょっとわかる気がする(笑)

何が見えますか? そこから一体何が見えますか?
時計のカラクリ創られた幸せの裏側から

そう思いたくはない気持ち 澱んだ川のその流れなら
全てを飲み込んで 全てをかき消して
やがて少年は大きな夢を見た


弘: あ、おれちょっと飲み物取ってくるわ
知: 弘人、グラスもお願いね、5コ
弘: 了解!
純: おい、弘人ぉ
弘: じゃあ純くん、よろしく歌っていてくれたまえ(笑)
純: そんな、無理だよ・・・
知: 純兄ちゃん大丈夫! 歌える歌える!
ユ: 純くんガンバレ!

境界線は今はまだ遠くぼんやりと霞んでる
そこは誰にも気付かれないこの道の分岐点の向こう
境界線を追い越す時それは多分きっと 新しい僕との出逢い

境界線を超える時僕は鳥にでもなるんだろう
そこは誰にも邪魔されない『自由』と『優しさ』の世界
境界線を追い越す時それは多分きっと 新しい朝の訪れ


純: ふう〜
弘: よ、純おつかれ!
純: 弘人ひどいよお〜
弘: 何言ってんだよ、ちゃんと歌えてたじゃんか
知: うまいうまい!
夏: いやあ、純くんよかったよ、雑音が入らなくなってから、よけい良く聞こえたね
弘: 雑音・・・(ガクッ)
夏: さて、じゃあ純くんも頑張ったことだし、そろそろ・・・

「BLUE TEARS」 JUDY AND MARY/1992・1994

知: へっへー、早いもの勝ち〜!(笑)
夏: 知佳ちゃ〜ん・・・
ユ: 知佳ちゃん、JAMだ
知: そ!
ユ: あ、なんか似合う気がする
知: そお?(喜) この曲はねえ、ユキさんのために選んだんだよ
ユ: 私?
知: うん! ちゃんと聴いててね

忘れかけてた 遠い記憶 風が かき乱すように
流れさる 透明のあなたの夢を 見ていた
夜空に浮かぶ 氷の月は
つま先から ふるえだして
限りなく 白い雪の ジオラマになる・・・・・・

口には だせない 恋をしていたね・・・・・・
たくさんのウソは いつか誰かを傷つけたの・・・・・・


ユ: じゃあ知佳ちゃんは
知: ん?
ユ: 昼間は学校で、夜は家のことと春ちゃんの世話、ねえ、大変じゃない?
知: まあ、もう慣れたかな、夜は弘人が学校だから、私がやるしかないしね
ユ: 強〜い!
知: 今までと変わんないよ、昼間は学校で、夜は家のこととお兄ちゃんたちの世話(笑)
純: そりゃないよ・・・(笑)
ユ: 学校のみんなは何て言ってるの?
知: うん、みんな応援してくれてるよ、あ、そう、それでね、1回だけ、春ちゃんを学校に連れてったことがあるんだ。弘人がどうしても手が放せなくて・・・
弘: ああ、あったあった
ユ: どうだった? 人気者?
知: それがね、校門くぐった途端、大泣きしちゃって、どうにも収まんなくて・・・
弘: それで、結局帰って来ちゃったんだよな
知: あたし中間テストだったのに・・・
純: 学校が嫌だったんだよ、きっと(笑)
ユ: さっすが、弘人くんの子供(笑)
知: そんなとこ似なくていいのにね(笑)

青い涙が 胸につたり うつろな瞳は 崩されて
伝えられない あの夏の the new fallen snow


弘: ねえ、ちょっと歌詞違うよ(注1)
知: いいのいいの!
夏: おい、なんか聞こえねえか?
ユ: 何だろ・・・ 泣き声・・・?
一同: 春ちゃん!
知: ちょ、弘人! 春ちゃん泣いてる!
弘: 俺見てくる!
   ドタドタドタ・・・
   ・・・・・・
   ドタドタドタ・・・
弘: オムツだ! 知佳、オムツ変えなきゃ!
知: ね、ちょっと弘人やってくれる?
弘: どこにあんだよ
知: 買い置きしてあるじゃない! あの洗濯機の上の・・・
弘: 洗濯機の上な、よし!
   ドタドタドタ・・・
   ・・・・・・
弘: (遠く)おい! 無いぞぉ?!
知: もう、無いわけないじゃない! えと、ね、ユキさん、ちょっと続き歌ってて!
ユ: ええっ?!
   ドタドタドタ・・・
   ・・・・・・
知: (遠く)ちゃんと探したの? あ、もう、ここにあるじゃない!
弘: (遠く)こんなところに隠してわかるかよ!
知: (遠く)隠してなんかないでしょ!
夏: まあったく、騒がしい家だよ・・・
ユ: (笑)

口には だせない 恋をしているね・・・・・・
たくさんのウソは あの人を いつか壊して・・・・・・

忘れかけてた 遠い記憶 風が かき乱すように
流れさる 透明のあなたの夢を 見ていた
限りなく 白い雪の ジオラマになる・・・・・・

空がわれて・・・・・・光が差しても・・・・・・
二人過ごした 最後の夜は・・・・・・

忘れられない あの夏の the new fallen snow


知: ふう、一件落着・・・
ユ: あ、春ちゃん連れてきたんだ
弘: ホラ春ちゃ〜ん、ユキさんですよ〜
知: 弘人、もう寝ちゃってるよ(笑)
ユ: ホントだ(笑)
弘: まったく、泣いてるか寝てるか、どっちかなんだから・・・
知: あ、歌、ユキさんありがとね
ユ: どういたしまして(笑)
弘: あ〜あ、ユキさんの歌ききそびれちゃったよ・・・
知: あたしも、ねえユキさん、もう1曲何か歌ってよ
ユ: あ、でも・・・
夏: あ、いいのよ俺は、別に、気にしないで、うん
ユ: ホントに?
夏: ほら、なんて言うのかな、やっぱり主役は、最後?
ユ: あ、うん、それなら(笑)

「みんないるよ」 mawari/1999

知: 「mawari」?
ユ: うん
知: 弘人知ってる?
弘: いや・・・
ユ: この曲ね、326さんが作詞してるの、すごく、いい曲だから・・・
知: うん、じゃあ、聞かせて!

ほんとは いつも こあかった・・・ たとえ みんなで 遊んでも
「なんか 自分は ひとりだな・・・」なんて 吐き捨てては 泣いていた

眠れぬ夜を越えては 時間を塗りつぶしてた・・・
顔色ばかり 気にしては また笑顔が 下手になってく・・・

やさしさを・・・ ぬくもりを・・・ 少しでも「元気に。」そう思う
はじめて「誰かに きこえて」と 思えたから。
つながりは ちっぽけな「哀しみ」と 呼ばれるものだって
いつかは ぼくらの このかべを こえられると 思ってます。


夏: しかし、ユキの歌声は、心が癒されるようだね
知: ホント・・・
弘: ああ・・・
純: すごくキレイな音
ユ: やめてよ、そんな・・・(笑)
夏: 少しでも「元気に。」か・・・
知: ユキさん、元気になったよねぇ〜 仕事の方は?
ユ: あ、うん、順調
知: よかった
ユ: あ、そうそう、篠田サイクルさん、今月の返済がまだなんですが(笑)
知: え、あ、そうでしたっけ? はい、今度必ず!(笑)

みんな ちょっとの 悲しみや 胸に張りつく 哀しみを
抱えてんだな・・・ いっしょだな・・・ でもね?
それは ちっとも やじゃなくて

「生きてるだけで幸せ。」今なら そう言えるから
弱音や愚痴を きかせてよ。 それで キミが 楽になるなら・・・

人並みに 幸せに・・・ 少しずつ みんなが幸せに・・・
全ての知らない人にさえ そう思うよ。
たくさんのちっぽけな「やさしさ」が どんどん広がって
『どこかの哀しい争いの その痛みを なでてあげる。』


知: ねえ、お兄ちゃん
夏: ん?
知: お兄ちゃんの体もさあ、いろんな病気を持つ人に移植されて、きっとみんな、ユキさんみたいに元気になってるんだよね
夏: そうだといいな
知: 絶対元気になってるよ、ユキさん見てればわかるもん
ユ: 夏生の体だからね、無敵だよ、きっと(笑)
弘: 夏生さんの肝臓をもらった人は、きっと酒が弱くなってるね
純: アニキの腎臓をもらった人は、きっとトイレの回数が2倍になってるよ
知: お兄ちゃんの角膜をもらった人は、きっと夜でもスイスイ歩けるようになってるよ
ユ: 夏生の心臓をもらった人は、きっとすごく心配性で世話焼きになってるね(笑)
夏: お前ら、言いたい放題言いやがって・・・
純: ユキさんに心臓をくれた人って、どんな人だったのかな
弘: きっと、強い、人だよね
知: うん、だってこんなに元気になるんだから
ユ: 私、わかるの。すごく、強い。とても頼りがいがあって、この心臓があれば、もう、何も心配いらないって感じがする・・・
知: そういうのって、わかるんだ・・・
弘: なんか、不思議だよな
知: よかったね、お兄ちゃん。 お兄ちゃんの心臓も、どこかできっと、誰かをこんなに元気にしてるんだよ
夏: あ、うん、そう、そうだよな!うん!

やさしさを・・・ ぬくもりを・・・ 少しでも「元気に。」そう思う。
全ての 知らない 人でさえ 愛せるはず
「人並みに 幸せに・・・。」少しずつ ぬくもり広がって
ひとりで ひとりで 泣くきみの そのこころを
なでてあげる 『なでてあげる。』


ユ: はあ、緊張した
知: ユキさん上手〜
純: ユキさんの心臓は緊張するんだ(笑)
ユ: うん、人前で歌うとか、ダメみたい(笑)
夏: さて! それではいよいよ・・・
ユ: 知佳ちゃん、もう1回歌う?
知: あたし? あ、じゃあさ、ユキさん、一緒に何か歌おうよ! ね?
ユ: うん!
夏: ユキィ・・・
ユ: 冗談だってば(笑)
知: もう、ホラ泣かないの!(笑)
夏: だってさ、ユキまで俺のことさ
ユ: ホラ、曲入れてあげるから元気出して!
夏: うん、じゃあ・・・コレ
ユ: OK!
純: ユキさんはやさしいよなあ
弘: 夏生さん、オヤジくさい歌は禁止っすよ
夏: うっさいなあ・・・

「夏色」 ゆず/1998

弘: あれ? 夏生さんも「ゆず」だ
純: ああ、俺が教えたんだ
ユ: ということは、その大元は弘人くん?
弘: うん、なるほど、そういうことになるのかな
夏: よし! 行くぜ!
弘: 夏生さんって、歌とか、こういうのは平気なのな
知: 女の子の前じゃ、からきしなのにね(笑)
ユ: 違う違う、見て見て、ほら(笑)
純: 足が震えてる!(笑)
知: ホントだ!(笑)

駐車場のネコはアクビをしながら 今日も一日を過ごしてゆく
何も変わらない 穏やかな街並
みんな夏が来たって浮かれ気分なのに 君は一人さえない顔してるネ
そうだ君に見せたい物があるんだ

大きな五時半の夕やけ 子供の頃と同じように
海も空も雲も僕等でさえも 染めていくから・・・

この長い長い下り坂を君を自転車の後ろに乗せて
ブレーキいっぱい握りしめて ゆっくりゆっくり下ってく


知: 二人乗りはダメだって、自分で言ってるじゃないねえ・・・
純: うん、それも毎日
夏: 君たちうるさいよ、だいたいねえ、毎日言ってるのに、全然やめないでしょ
純: 失礼しました(笑)
知: でもいいなあ、こういう二人って
ユ: あれ? 弘人くんはバイクの後ろとか、乗せてくれないの?
知: うん、昔はたまにね、でも、弘人が免許取ってからは、ほとんど車だから
弘: あのワゴンにも、ちゃんとベビーシート付けたっすよ
夏: 弘人、お前、運転気をつけろよ。知佳と春ちゃん乗せてるんだからな。お前はともかくとして
弘: そんなぁ
夏: お前はともかくとして
弘: 繰り返さなくても・・・

風鈴の音でウトウトしながら 夢見ごこちでヨダレをたらしてる
いつもと同じ網戸ごしの風の匂い
休日でみんなもゴロゴロしてるのに 君はずいぶん忙しい顔をしてるネ
そうだいつかのあの場所へ行こう

真夏の夜の波の音は不思議な程心静かになる
少しだけ全て忘れて波の音の中 包みこまれていく

この細い細い裏道を抜けて 誰もいない大きな夜の海見ながら
線香花火に二人で ゆっくりゆっくり火をつける


知: さて、あたしちょっと雨戸閉めてくる
純: ?・・・! あ、そうだな、夜遅くなると、近所迷惑だし
知: 弘人も手伝って! 二階お願いね
弘: なんだよ、突然(笑)
知: いいから来なさい!
ユ: ?
   ドタドタドタ・・・(廊下へ)
弘: そんなの三人がかりでやらなくても・・・
知: 弘人、ホント鈍いよね
純: ちょっとくらい、二人っきりにしてやってもいいだろ
弘: (!)ああ、そういうことか
知: そ!(笑)
   ×     ×     ×
夏: なんだよ、余計な気まわしやがって・・・
ユ: ね(笑)
夏: ・・・・・・
ユ: ・・・・・・ねえ、夏生
夏: ん?
ユ: 知佳ちゃんたち、ホントに気付いてないのかな、私の心臓のこと・・・
夏: ・・・・・・気付いてるよ
ユ: !
夏: ユキはさあ、どうして知ってるんだ? ユキのドナーが、俺だって事
ユ: 夏生が、ドナーカードを持っていて・・・でもあの時期、心臓移植を受けたのは私だけだから・・・
夏: だろ? だったら、そんな簡単なこと、知佳たちだって、気付かないわけないじゃないか・・・
ユ: え、でもさっきは・・・
夏: だから、気付かない振りをしてるだけ
ユ: そんな・・・
夏: だってそれは、知らなくていいことだし、知ってちゃいけないことだからな・・・
ユ: ・・・・・・

いつか君の泪がこぼれおちそうになったら何もしてあげられないけど
少しでもそばにいるよ・・・


夏: ユキ、ごめんな、勝手に死んだりして・・・
ユ: ううん、夏生は悪くない。仕方ないよ、事故なんだから・・・
夏: でも、結局俺さ、ユキになんにも・・・
ユ: それに! 夏生は、死んでなんかないよ
夏: !
ユ: 夏生は、私の胸で、ちゃんと生きてる。手を当てるとわかるもん、夏生の鼓動。あったかくて、すごく、力強い・・・
夏: そ、そうか、なんか照れるな(笑)
ユ: ね、夏生も手、当ててみて・・・
夏: え・・・!
ユ: 何照れてんのよ(笑)私、夏生なら、平気だよ
夏: えと・・・じゃあ、その、失礼しま〜す
ユ: (笑)
夏: ホントだ・・・聞こえる
ユ: ね? 
夏: なんか、すごい、ドキドキしてる・・・
ユ: あ、だって・・・それは・・・
夏: あ、ごめん・・・
ユ: うん・・・
夏: ・・・・・・
ユ: 夏生・・・ありがとう・・・
夏: いや、俺はだってさ、別に、ユキを助けるために死んだわけじゃないし、その、ドナーカードだってさ、もし、何かそういうことがあったとき、ユキのような人に、少しでも力になれればって・・・
ユ: そんなことわかってる!
夏: ユキ・・・
ユ: そういう意味で言ったんじゃないよ・・・
夏: ・・・・・・
ユ: 私だってわかってるよ。心臓移植は、誰かが死ななければ出来ないんだって・・・。でも、私、それが嫌だったの。私だって、生きたくないわけじゃない、でもそれ以上に、私は誰かが死ぬのを待つような、そんな人間になりたくなかった!
夏: ・・・・・・
ユ: でも私、わかったの。死にたくて死ぬ人間なんていないんだって。みんな生きたくて生きたくて、それでも、みんな、いつか死んでしまうんだって。だから、そんな人たちの想いを受け取った私は、しっかりと生きていかなくちゃならないんだって
夏: ユキ、わかったよ。大丈夫、もう、話さなくていいから・・・
ユ: 私、夏生からもらったのは、心臓だけじゃない。失礼な言い方、私、心臓なんて、夏生のじゃなくてもよかった。だってそうでしょ? ドナーカードを持つ人は、みんな夏生と同じ気持ちなんだから・・・
夏: うん、そうだよね・・・
ユ: だから、知佳ちゃんたちが知らない振りをするなら、私も、ずっと知らない振りをする。私が夏生からもらったものは、心臓じゃなくて、生きていく力!
夏: うん
ユ: それから・・・
夏: それから?
ユ: それから、きれいな海と、真珠のネックレスと(笑)
夏: そうそう、あと、篠田家秘伝の味と、名物、イセ屋の最中も
ユ: で、たくさんの優しい言葉と、弘人くんの口座と、オヤジくさいお説教(笑)
夏: 結構、いろいろあったね
ユ: うん・・・

この長い長い下り坂を君を自転車の後ろに乗せて
ブレーキいっぱい握りしめて ゆっくりゆっくり下ってく

ゆっくりゆっくり下ってく・・・・・・

ゆっくりゆっくり下ってく・・・


ユ: ねえ、夏生・・・
夏: ん?
ユ: これからもさ、もっともっと、いっぱいいろんなもの、ちょうだいね(笑)
夏: それは・・・もう、難しいかな・・・
ユ: ・・・?
夏: だってほら、俺はもう、死んじゃったわけだから・・・
ユ: そんな・・・! だってこうして、ここにいてくれてるじゃない・・・
夏: だから、これからは、二人で一緒に、見つけるんだ。
ユ: !
夏: 二人で、もっともっと、いろんなとこ行って、いろんなもの見て
ユ: そっか・・・、もうずっと、一緒だもんね・・・
夏: もちろん
ユ: うん・・・
夏: ユキ・・・
ユ: ・・・・・・!
夏: ・・・・・・
ユ: ・・・・・・
夏: えっと・・・
ユ: ・・・どしたの?
夏: 今日は、バスとか、おばちゃんとか、来ないよなって・・・
ユ: 家の中だよ(笑)
夏: そっか、そうだよな、そうだよ、家の中だよ
ユ: (笑)
ユ: 夏生! いいよ・・・
夏: うん・・・
ユ: ・・・・・・
夏: ・・・・・・
春: ダァ・・・
夏: ダァ・・・ ダァ?!
ユ: !
夏: あら春ちゃん、起きちゃいましたか〜、こんな時に〜(笑)
ユ: (笑)
弘: あ、春、バカ! せっかくいいとこなのに・・・
知: 弘人、ダメ!
夏生+ユキ: !
弘: あ、やべ・・・
夏生+ユキ ・・・・・・
純+弘人+知佳 ・・・・・・
夏: 君たちい、これはどういうことかなあ〜
純: アニキ、ごめん!
知: お兄ちゃんゴメン! 別に覗こうとかって、そういうんじゃなくて、その・・・
夏: いいんですよ、言い訳は、ま、3人とも、そこに座りなさい・・・(笑)
知: はい・・・
夏: 何度言ったらわかるんでしょうね。いいですか、あなたたち。いくら、親しい家族とはいえですよ、やはり、最低限のプライバシーというのはあるわけですよ。そりゃあね、こんなリビングの真ん中で話している僕らにも、非が無かったとはいえません、しかし!しかしですよ・・・
弘: はじまったよ・・・
ユ: あの・・・私、そろそろバスの時間だから・・・(笑)
知: あ、ね、ほらお兄ちゃん、ユキさん帰るって! ちゃんと送っていかないと・・・
夏: 大丈夫ですよ、あとでちゃ〜んと、弘人くんが車で送ってくれますからね
弘: そんな勝手に・・・
夏: そうだ、ついでだからユキも、そこに座って聞いていきなさい
ユ: なんで私まで〜(笑)
知: (ユキさん、足、崩しておいたほうがいいよ、これ、長いから・・・(笑))
ユ: (そんなこと言ってないで助けてよ(笑))
弘: (純! 補聴器付けろよ!)
純: (聞こえませ〜ん(笑))
弘: (きったね〜(笑))
夏: はいそこ! 何をコソコソ話しているんですか?
弘: いえ、何でもありません!
夏: さあ、僕としても、あなたがたに説教するのは、大変久しぶりです。この際ですので、今日は日頃言いたかったことを、残らず言わせてもらいます
弘: ゲッ・・・
夏: まず弘人くん!
弘: はい!
夏: 弘人くん、君はねえ、もうお父さんなわけですよ、しかし、最近の君を見ていると、どうもその自覚というか、何というか・・・・・・
夏: ・・・・・・・・・・・・!
夏: ・・・・・・・・・
春: ・・・・・・ダァ

こうして、篠田家の夜は、今日も何事もなく(?)暮れていくのでありまして・・・・・・


      ――― Special thanks for everyone!  pix_pom 22/SEP/2000 ―――


引用曲一覧(登場順)

「向日葵ガ咲ク時」 ゆず/2000
作詞・作曲:北川悠仁
アルバム(限定生産)「ゆずマンの夏」より

「境界線」 ゆず/1998
作詞・作曲:岩沢厚治
アルバム「ゆず一家」より

「BLUE TEARS」 JUDY AND MARY/1992・1994
作詞:YUKI 作曲:恩田快人
シングル / アルバム「J・A・M」より
(注1:オリジナル歌詞は「忘れられないあの"冬"の〜」です。ま、いいじゃない^^)

「みんないるよ」 mawari/1999
作詞:326 作曲:mawari
シングル / アルバム「ひまわり」より

「夏色」 ゆず/1998
作詞・作曲:北川悠仁
シングル / アルバム「ゆず一家」より


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